「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

The Best Of Shogo Hamada vol.3

The Best of Shogo Hamada vol.3 The Last Weekend/浜田省吾 ¥3,059 Amazon.co.jp

このアルバムを発売したのが去年の秋頃。前回のオリジナルアルバム『My First Love』からもう6年くらい経ったのかな。その後、ベストアルバムを2枚出して、そろそろオリジナルくるだろ、と思ったら、このベストが出た。

正直言って、その時「なんで?」と思った。浜田省吾のファンになってもうすでに10年経つし、ライブも毎回応募して3回参加したことがある。僕ほど浜省のことを好きな同年代はみたことがないほどである。

でも、CD聴く気になれなかった。こんな、カチカチの社会派アルバムをこのご時世に出してどうすんの?と思ったのである。14,5歳のころ、誰もかれもラブバラードばかり歌う中で、社会派の歌を歌うところに惹かれて浜田省吾のファンになったんだけど、最近じゃ、内省的な歌やバラードばかり聞くようになっていた。はっきり言うと、反戦とか平和とか「どうでもいいじゃん」と思うほど平和な暮らしだったのだと思う。聴き始めたのが9.11の頃。イラク戦争が始まったのが高校1年生。男子校だったし、ラブソングの意味もよくわかってなかったのかもしれない。

とにかく、戦争の本を読んだり、各国の情勢について調べたり、そんなことしてる中で浜省を聴いていたような気がする。そして、政治学科に入って、政治哲学を専攻。僕の生活には社会情勢について自分なりのスタンスをどう持ったらいいか、と考える時間が保たれていた。(スタンスをニュートラルにしておこうという判断だって時間がないとできない)

でも、なんだか、社会人になって、日常に追われ過ぎていた。いやなひととどう折り合いをつけるか、とか自分のキャリアプランだとか、すごくミクロな世界に埋没し過ぎていたようだ。震災後にこのアルバムを聴いて、そう思った。

②裸の王様 寒さに凍えてる者達に木を切るなと誰が言えるだろう 飢えている者達にその土地を耕すなと誰が言えるだろう 重い。窮地に追いつめられた人がとる行動を傍観者が批判することの無意味さ、人間社会への批判である。 オリジナルアルバム『その永遠の一秒に』の音源だと思われる。

③詩人の鐘 タブーだらけの自由の中で葬られてゆく 孤立した叫び声 自浄出来ぬシステムに真実はねじ曲げられ 幻想だけ煽られていく プラスティックインフォメーション メディアを満たす時 痛烈なメディア批判。メロディもカッコいいんだけど、この詩をのっけちゃうところが凄い。Aメロは絶望的なくらいの社会批判なんだけど、サビの解釈が難しい。『鐘が鳴ってる』とは希望の鐘なのか、終焉へのカウントダウンなのか・・・。オリジナルアルバム『誰が為に鐘は鳴る』とは違う編曲。

④THEME OF FATHER'S SON この曲が別のアルバムに入っているなら聴こえ方も全然違う気がする。父と母との懐かしい思い出を通して、人類が失ったナニかを思い起こさせるような一曲。

⑤RISING SUN 風の勲章 戦後、アメリカの庇護の下、繁栄してきた日本への警鐘を鳴らす。 you just believe in money 焼跡の灰の中から強く高く飛び立った 1945年 打ちのめされ 砕けた 心のまま 1945年 焼け跡から 遠く飛び立った今

⑥Blood Line フェンスの向こうの星条旗 これもオリジナルアルバムのままだと思われる。この歌でいうfatherとは何のか。国のあり方を示してくれる『歴史』『文化』であり、子どもたちに人間の生き方を示しくれる『師』『先生』であり、浜田省吾が歩むロックンロールの『元祖』『起源』なのかもしれない。 でも、もう誰にもfatherはいないのである。やっと見つけたfatherは年老いて、地をはい、醜い姿で助けを求めてくるような存在だった。誰も道を示してはくれない。

⑧MY HOME TOWN BankBand でカバーされて有名になったかもしれないこの曲。絶望的なくらい暗い。オチも怖い。曲はカッコいい。

⑨東京 すごいカッコいい曲だから、新しいアレンジが聴けるとおもって楽しみだったんだけど、原曲のまま録音されている。もう30年以上まえのじゃないかな。それでもこのままでいいと思えるくらい完成度が高いのだ。

⑩午前4時の物語 浜田省吾がラップに挑戦した意欲曲。新しいアレンジ。うまくなってる気がする。

⑪とらわれの貧しい心で デビューアルバムに入ってる曲だから超古い。単純だけど独特でキャッチーなメロディだから良質な音での新しいアレンジは嬉しい。 疲れたようなメロディとせつない歌詞。傑作だ。 そして とらわれの貧しい心は たったひとつの真実も見分けられぬままで 同じところを何度も 彷徨い歩き続け 会う人を理由もなく傷つける そして とらわれの貧しいこの国 顔背けて犯してきた あやまちの償いを すべての空へ すべての人の上にへと 子供等の明日を巻き込んで

⑫A NEW STYLE WAR 初めて聴いたときから大好きだったこの曲。鳥肌が立つほど衝撃的だった。新アレンジになって、最後の「HEY!]にちょっと勢いがなくなったのが残念。 ひび割れた原子力 雨に溶け 風に乗って 受け止めるか 立ち止まるか どこへも隠れる場所は無い 愛は時にあまりに脆く 自由はシステムに組み込まれ 正義はバランスで計られ it's a new style war この歌詞、洒落にならないね。

⑬愛の世代の前に カッコいい、世紀末の危機感がひしひしと伝わってくるメロディ。愛の世代って何なのか。まだよくわかりません。

⑭桜 インストの新曲。それでも、日本を愛している。希望を持って生きていこうという意思が伝わるメロディ。

何といっても ①僕と彼女と終末に この曲のもっている力はすさまじい。なんで一曲目なんだろう。このアルバムを聴く気になれない理由の半分以上はこの曲順になるんじゃないか。この曲を聴いたらもうお腹一杯だよ。

売れるものならどんなものでも売る それを支える欲望 恐れを知らぬうぬぼれた人は 宇宙の力を 悪魔に変えた 君を守りたい ただひとりの 君を守りたい この手で 愛を信じたい 人の心の 愛を信じたい いつの日か いつか子供達に この時代を伝えたい どんなふうに 人が希望を 継いできたか

もう、今、日本に必要なのはこの言葉しかないんじゃないかと思う。

君を守りたい ただひとりの 君を守りたい この手で 愛を信じたい 人の心の 愛を信じたい いつの日か

大切な人は自分の手で守るしかない。あやまちばかり繰り返すけれども、それでも人の心の愛を信じよう。浜田省吾はこの普遍のテーマを歌い続けてきたし、これからも歌い続けていくという決意でこのアルバムを出したのだろう。歌の持つ力は大きい。被災地の方にこの歌が届きますように。