「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

善き人のためのソナタ

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]/ウルリッヒ・ミューエ,セバスチャン・コッホ,マルティナ・ゲデック
¥5,040
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人生で観たベスト映画は何か、と聞くことにしている。 その中で友達の彼女が出したのがこの作品。 舞台はベルリン崩壊前の東ドイツ。民衆が国家保安局の監視下に置かれ、芸術家たちはその制限の中で作品を作らなければならない。 監視を逃れ国家の意向に反した活動をしようとする舞台脚本家と、彼を監視する任務に就いた保安局員のお話。 この局員の演技が素晴らしい。前半は本当に心を亡くした任務遂行ロボットに見える。でも、後半は同じように無表情なのだけれども、いじらしさがにじみ出ているような気がする。 芸術に心を動かされた局員(それが自殺した芸術家が残したソナタなのか、盗聴している間に彼らの崇高な美意識に感化されたのかは判然としなかったけど)がさりげなく彼らを救おうとしたのはは芸術に魅せられた末の行為だったが、一方で、女優として生きるために恋人を捨てざるを得なかった彼女も芸術の誘惑に心を奪われてしまった犠牲者なのだ。 芸術への熱情で滅んでしまう二人の間で、みずからの芸術性を開花させた主人公の存在は、あまり美意識に訴える存在ではない。 というネジレが面白い。 良い映画だった。