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「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

渇き。

映画

渇き

問題作『渇き。』観てきました。映画サイトでの評価は全く良くないですが、私としては大変、面白い映画だったと思います。まるで山椒を山盛り一杯食わされるような衝撃。タランティーノの手法だとか、○○年代のパクリとか、そういう批判は私にはよく分かりません。ただ、素人目から観てあのコマ割り、あの音楽、あの時系列の描き方に驚愕し、息つく暇もないほどの狂気に翻弄されるだけ。まさに劇薬の様な作品でした。

なぜこの映画のタイトルが『渇き。』なのか。性への渇望か、子供への渇望か、生への渇望か、全ての欲望の渇きなのか。はたまた、彼らの行動原理を理解しようとする私から生まれてくる渇きなのか。考えれば考えるほど、渇きにハマっていきます。

この映画を批判する前に一つだけ申し上げたい。登場人物の感情が見えないとか。なぜ加奈子がこんなことになったのか全く分からなかったとかいう批判は、この映画の前では完全に無効です。だって、ある環境下に置かれるとどんな善い人でも悪の道に落ち込んでしまうとか、人間の行動原理は論理的に説明できるとか、そういった迷信を、目の前で解体するのがこの映画の狙いだから。私には理解不能な人間が、私には理解不能な行動をすることによって、私の幸せな人生がバラバラに解体される、ってことが起きるんだよ、とこの映画は訴えかけている、気がするのです。いくら貴方が、こんな映画ばかばかしいと非難しようが、加奈子が目の前に現れて、全ての幸せを解体していくだろう、さらに言えば、あなたがあなたの規範で生きてきたそのことが、誰かにとっての加奈子なのかもしれない。

こんなことありえない?こんな人間いるはずがない?いやいやいや、これは全部貴方です。中島監督はそう言っている。

主役の役所広司の鬼気迫る演技はもちろんですが、加奈子役の小松奈菜の存在感が半端じゃない。二階堂ふみ橋本愛と言った次世代の日本映画を牽引する圧倒的存在感の女優が、脇役に納まってしまうくらいの存在感。たぶん、この役は橋本愛でも出来たと思うのです。悪魔的な可愛さと、天使の残虐性を併せ持った、加奈子の表情は橋本愛に通じるものがある。でも、橋本愛では、今にも空気に溶けていきそうな儚い危うさは出せなかったろうと思うのです。悪魔的な可愛さと天使の残虐性が今にも空気に溶けていきそうな危ういバランスの中で腐臭を放つあの演技、小松奈菜のポテンシャルに鳥肌が立ちます。

最近では、橋本愛が一番好きだったのですが、小松奈菜の応援したくなりました。

観るとめっちゃ疲れるので、全く予定のない土曜日の昼くらいに観るのがオススメです。本当に面白いのでぜひ観てね。