「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

風立ちぬ

最新ジブリ映画『風立ちぬ』観てきました。

以下、少しネタバレですので、まだ観ていない方はご注意ください。

まず、声優の庵野秀明さんの演技が完全に棒です。あえて、ぶっきらぼうで淡々とした声を使いたかったのかもしれませんが、それにしても棒過ぎる。全く感情が伝わってきません。生きねば、という必至さも、ヒロインへの愛情も全く伝わってきませんでした。 瀧本美織ちゃんの声は透き通っていて可憐で、素晴らしかったです。

ストーリーは特に事件もなく、たんたんと男の人生が描かれていきます。普通に生きている男が体験するであろう就職、結婚、死別を描いています。あんなに熱意を捧げていた飛行機なのに完成した後の描写がなかったのが、なんとも消化不良でした。

映画にしてまで宮崎駿が描きたかったのは、あの時代のゆったりとした時間の流れなのではないかという考察がありますが、ちょっと当てはまらないと思います。描かれている人達が上流階級過ぎて、”あの時代”がゆったりとしていたというよりも”あの階級が”特別豊かな時間を過ごしているのではないか、と思えました。彼らだけが、緑豊かな避暑地で過ごし、美味しそうな魚を食べて、勉強しながら、たばこをぷかぷか吸っていたのではないか。そんな上流階級の下には何倍もの庶民や貧民が、泥にまみれて働いて、腹を空かして喧嘩して、不平等社会を恨みながら死んでいったのではないか。

私はこの映画は普通に面白くなかったと思います。 でも、宮崎駿の映画だから、”面白かった”ような気にさせてしまうのが、この映画の本当の恐ろしいところな気がします。