「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

ゆれる

邦画の名作と名高い『ゆれる』を観ました。噂に違わず、凄い作品です。

オダギリジョー扮する主人公、猛は東京で売れているプロのカメラマン、一方、香川照之扮する兄の稔は地元の山梨県の片田舎で家業の小さなガソリンスタンドをついで細々生きています。母の法事で久々に帰省した猛は、久々に幼なじみの智恵子と再会するが・・・。

登場人物の行動や考えに一貫性がない…キャラクターがゆれる みんな、良い人でも悪い人でもない…道徳観念がゆれる 事実がいくつもある…真実がゆれる

人物の行動に理由をつけていくと結論に繋がらない。 結論から推測すると、前提が覆る。

すると、ラストの解釈が覆る・・・とにかくゆれる、ゆれる。

首尾一貫した行動をとれる人間なんていないし、良い行動、悪い行動をし続けられる人間もいません。みんな追いつめられて考えを変えて、プレッシャーに負けて萎れてしまう。目の前の誘惑に意思が曲げられて、失敗して言い訳ばかり。そんなリアルな人間描写が、ストーリーと映像と音楽が絡み合って、直情的に伝わってきます。

香川照之のあどけなさ、かわいらしさ、不器用さ、そして何よりもあの”キモさ”がこの映画の特異性を際立たせました。 最後のあの笑顔の意味・・・考えれば考えるほど分からない。純粋無垢な笑顔に見えるけど、虫を踏みつぶして笑う少年の笑顔の様にも見えました・・・。