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「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

退職しました。

前にも書きましたが、転職先が決まったので、3月31日をもって5年間勤めたメーカーを退職することとなりました。すでに有休消化に入っており、悠々自適な有閑貴族、満喫中です。来週からちゃんと働けるか心配です。

もう働いていた会社の記憶が遠のき始めているので、完全に消え去る前に、ココに記しておくことにします。

2009年新卒で入社し、3ヶ月の研修期間がありました。英語研修、ビジネス基礎研修などなど。そこでTOEIC855取れるまで勉強させてくれたので感謝していますが、その他の研修は今から思えば全部遊びでした。大手企業は研修がしっかりしているから良いなどと言われますが、その研修が何かに役に立つと言うことはありません。強いて言うなら、同期の絆が深まった、と言えるかもしれません。ただ、私は集団生活がすごく苦手なので、大勢の同期とはあんまり群れず、少数の親しい人たちだけで固まっていた様な気がします。

2009年7月からひとりぼっちで縁もゆかりもない土地、T市の販売子会社に営業として配属され、S市、K郡を1年、T市を1年、計2年間従事しました。知り合いもいない、友達もいない、同期もいない環境で、周りに何もない土地で一人暮らしです。今思い出しても憂鬱になるくらい辛い日々でした。親会社から来たことで、子会社の先輩に無視されたりしたこともあります。今覚えば自分が相当生意気だったせいとも思います。とにかく仕事で見返すしかなく、必至で働きました。それが奏功して、先輩や同期を置いて出向解除となり、本社に戻ることになりました。この営業時代の経験が自分の社会人観というか仕事観を形作ったような気がします。中小企業ながら、従業員の人生を背負った社長たちと相対し、仕事の厳しさや面白さを教えてもらいました。地方の中小企業の社長さん達、ほんっとに半端じゃない人達が沢山いました。大企業でサラリーマン社長している人なんて比べ物にならないほどの迫力と覚悟で人生を切り開いている人達でした。そこでの出会いが結局、転職という結果に繋がったのかもしれません。

2011年10月からは本社工場の管理部門で働きました。やっと本社の上司や先輩や同期や後輩と仕事をするようになり、人間関係が99%という世界の中で、仕事だけをみれば生温い環境の中2年間やっていた気がします。休みは9連休が年4回、毎月有給消化できるし、帰ろうと思えば毎日4時45分に帰れる超ゆとりある働き方でした。だからこそ、いっぱい旅行にもいけたし、パソコンを勉強する時間、本を読む時間をとることができました。ワークライフバランスが良い会社とはこのことかもしれない。でも、さすがに2年やっているとこれでいいものかと思えてきました(人間ってわがままですねほんと)。ワークよりもライフが肥大化して、毎日8時間だらだらしていることが辛くなってきたのです。休みは休みで楽しい。趣味を充実させれば良い人生になるかもしれない。でも毎日提供している8時間を無為に過ごしているようじゃ、結局ワークライフバランスが良いとは言えないんじゃないかと思ってしまったのです。

そして本当にやりたいことを求めて、転職という道を選びました。超ホワイト企業から、激務とされる商社へ転職です。仕事はキツくなるかもしれませんが、ワークの方が充実した人生を送りたい。今はそう思っています。

以上が、表向きの退職エントリです。

以下はある青年が就活をしてから退職に至るまでのフィクション小説です。私とは一切関係ありませんし、登場人物、団体は全て架空のものであることは言うまでもありません。なぜこんなことを書くのか・・・?それは一人の若者にも私の様な失敗をして欲しくないからです。

K大学法学部の彼は大学3年生の冬を迎えていた。そろそろ就職活動も本格化してくる頃だ。彼に特にやりたい事があったわけではないが、漠然とした将来像はあった。世界を舞台に働きたいという、ごくありふれた夢だ。高校大学時代は英語の学習に情熱を注いでいたし、簡単な語学留学をしたこともある。第2外国語中国語も週4回コースを履修している。 どんな会社に入れば世界に羽ばたけるのか彼なりに業界研究をしてみた。N経新聞を読んだり、会社説明に顔を出したり、OB訪問をしてみたり、誰もがやっていることだ。 ある日、N経新聞が毎年発表している『優秀企業ランキング』というものを目にした。どれも有名企業ばかりだった。商社、銀行、通信、家電、自動車など、テレビCMでおなじみの会社ばかりだ。ただ、2連覇を達成したという1位の企業だけはあまり馴染みのないメーカーD工業というらしい。友人らと就活の話をしている時に話題に上ったこともないし、就職人気企業ランキングでも観たことがない、でもN経新聞が太鼓判を押すのなら、これは穴場の就職先かもしれないと彼は思った。 すぐに会社説明会に応募し、綺麗なホテルの会議室で人事担当者の話を聞いた。「D工業の売上の90%は海外!今や日本市場をみていたら成長はありません!あなた達の活躍の舞台は海外です!日本に留まりたいという人には来て頂きたくない!世界120カ国以上で我が社の製品は使われております。さすがに総合商社でも120カ国というわけにはいきません。我が社は日本で最もグローバルな会社なのです!」軽妙に人事担当者はプレゼンを進めた。さすがはグローバルカンパニー、参加している学生達もみんな海外志向だった。 学生『タイ語をやっているのですが生かすチャンスはありますか?』 人事『もちろんです。タイにも工場を建設する予定ですし、アジアは今後最も成長が見込める市場です。』 学生『何人くらいの人が海外にいますか?』 人事『グループ社員全体の半分以上は海外におります』 1から10まで全てがグローバルだった。彼はD工業のグローバル展開に魅了され、あまり人気ではない穴場企業ということで、就職試験を受けることにした。 1次試験は筆記試験。ただ前日に受けていた会社と同じフォーマットの試験だったので、簡単に解けてしまった。自己採点の結果はほとんど100点に近く、1次試験は難なく突破した。 次はなんと課長面談。一般社員面談を飛び級して、もう最終前まで来てしまった。 課長『語学は何をしていますか?』 彼『中国語を少々』 課長『あなたには中国いってもらうかもしれないわね。』 面接中も、グローバル展開を説明されつつ、結果通知はすぐに来た。合格だった。 続いての最終面接は、意思確認だった。筆記試験がうまくいったせいか、実質面接は一回で済んでしまった。 こうして彼の就活は4月初旬にあっけなく終わった。 そして1年後の4月1日、D工業の入社式。新入社員名簿が配られ、そこには全員の出身大学が載っていた。T外語大、O外語大、Kキリスト教大学、K外語大、J智大学など外国語に強いとされる大学出身者が非常に多い。彼らはみんな口を揃えて言う。「海外で活躍したい」と。それはそうだ。人事担当者からそういわれて入社したのだから。 社長の挨拶のあと、配属先一覧が配れた。みんなが目指す部署は只一つ『海外営業部』だ。世界を忙しく飛び回るビジネスパーソンを夢見て入社した。しかし、配属先を見て、彼らは言葉を失くす。紙にはこう書いてあった。 国内工場総務部 国内工場生産部 国内営業部(子会社出向) 新入社員『海外部門への配属はないのでしょうか?』 人事部『新入社員の海外部門配属はありません』 新入社員『それではキャリアパスとしては、海外に行くにはどの道を進めば良いのでしょうか?』 人事『国内工場生産部から海外営業部、または国内営業から海外営業部というルートが今まで多かったようです。ただし全員がという訳ではありませんが…。』 そこで、新入社員は皆同じことを考えた。海外営業部には行きたいが、国内営業の子会社出向は避けたかった。紙の端っこに小さな字で5年後は出向➡転籍と書いてあったし、国内の顧客は相当危険な世界であるという噂が流れたからだ。せっかく海外を目指してD工業に入社したのに、国内の販売子会社に転籍となっては洒落にならない。結果的に、新入社員50人のほとんどが国内工場生産部を希望することになった。 当然、全員生産部にまわされることはなく、彼は国内営業配属となり、子会社出向を命じられた。しかし、ココでもう一つのからくりがあった。国内営業部となった10人のうち2人だけが、国内営業部から研修という形で国内生産部へ行き、2年後には海外営業部へ異動するという切符を貰ったのだ。そう、国内工場生産部から海外営業部というルートはこのことだった。最初から国内工場生産部に配属になった人間は、この時点で海外営業部への道は閉ざされることになった。 かくして、ロシア語ペラペラのAさんも、アラビア語ぺらぺらのBさんも、中国語ペラペラの彼も全員が国内関係の仕事につくことになった。 それから5年・・・彼を含め国内営業部の8人は一度も本社で働くことなく、全員が子会社に転籍となった。国内工場生産部から海外営業部へ行ったものは東京本社の海外営業部で事務作業をしている。3年間で海外出張は0回。海外の仕事は現地法人に全て任せているから、出張する必要もないのだ。その他40人の同期は全員、国内工場で働いている。 結局、半数いる海外従業員は、現地採用の現地人。 グローバル展開は意識の高い学生を釣るためのエサに過ぎなかった。 たしかに駐在員は存在する。ただし現地の統括をまかされる部長、本部長クラス数名だけだ。全社員の1%ほど。 生産は技術部門が、販売は商社がやってくれるので、事務系の仕事はもっぱら社内向け資料の作成と人間関係作り。仕事は楽だが、何か生産的なことをしているわけではないので給料は新入社員の頃から数千円上がるだけだ。残業代は全て出るし、休暇も沢山与えられる超ホワイト企業であることは疑いない。この会社にいれば飢え死にすることはなさそうだ。 会社は嘘をついた訳ではない。グローバルカンパニーであるのも、従業員の半分が外国にいるのも本当だ。ここには被害者も加害者もない。 彼は大学の後輩がOB訪問に来たとき、結局人事からきいた言葉を繰り返している『D工業は(ある意味)最も進んだグローバルカンパニーだよ』と。 おしまい。

会社説明に行っても、OB訪問をしても本当のことなんて絶対に分かりません。もし、学生に何か出来るとしたら、もの凄く仲の良い先輩が働いている会社から情報を仕入れるしかないと思うのです。それが学生就活人気ランキングに反映されているとしたら、あれほど信憑性のあるものはありません。間違ってもN経新聞なんか当てにしないほうが良いのです。学生さん、気をつけてね!やっぱりマスコミ、商社が良いよ!