「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

虐殺器官

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)/早川書房 ¥756 Amazon.co.jp 名前からして、スプラッター系ホラー小説かと思ったのですが、SF小説でした。 舞台は近未来。主人公は政府系暗殺機関に勤めるアメリカ人。9.11以後、インドで核戦争が起き、サラエボに核が落ち、世界各地で大虐殺が行われている混沌状態にある世界。紛争地域ではありとあらゆる非人道的な殺戮が行われており、それを制御する先進国のテクノロジーも人間であることを止めさせる。 世界設定も丁寧だし、出てくる装置や機械の設定も細かく拘り抜いています。さらに、政治哲学、進化論、言語学倫理学などを持ち出しながら、学問横断的に人間社会が抱える問題をえぐり出す様は感動的ですらあります。 ただ、エンターテインメントとして、起承転結が浅いような気がしました。序盤から終盤までたんたんと進みます。最後の最後に、上記に挙げた難しいテーマに1つの解が与えられて、読者の心にずしっとのしかかる、感じ。 同じような世界観だと【ジェノサイド』の方が完成度が高かったです。