「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

歓喜の仔

歓喜の仔 上巻/幻冬舎 ¥1,575 Amazon.co.jp 歓喜の仔 下巻/幻冬舎 ¥1,575 Amazon.co.jp 『永遠の仔』の衝撃は今でも忘れられません。あれほど胸を締め付けられた小説はなかったと言って良いでしょう。その後の、『悼む人』も読みましたが、永遠の仔には到底及ばないストーリーでした。今回、天童荒太さんの新作『歓喜の仔』が出ましたが、位置づけ的には、永遠の仔、悼む人から進化を遂げた、天童文学の金字塔らしいです。 主役は子供3人。17歳ながら、昼は市場で夜は中華料理屋で、深夜は違法の仕事をし、家庭を支える長男。小6ながら、寝たきりの母親の面倒を一手にみる次男。幼稚園に通う末っ子の長女。 父はおらず、母親は意識がなく寝たきり。長男は大好きだった歌が歌えなくなり、次男は色彩がわからなくなり、長女は匂いがわからなくなった。父親が残した借金の返済のために毎日泥のように働く日々に見えた唯一の希望は・・・異国にすんでいる同士だった・・・。 よくあるように、異国にいる同年代と文通するとか無線通信するとかではない。夢か妄想の世界で彼の行動が見える。あいつもそこで頑張っている、と思うと自分も頑張れる、という。 ただ、夢なのか現実なのか、最初ははっきり区切られているのですが、最後の方はどっちがどっちなのかごっちゃになってきました。僕の読み方が雑なのかもしれませんが、意図的に、こっちの世界もあっちの世界もない、ということを暗示したかったのかもしれません。 本作品も永遠の仔には遠く及ばない凡作でした。 いや、駄作だったかもしれません。 はっきり言って全然面白くなかったから。 人間讃歌としてもパンチが弱いし、永遠の仔ほどきっちり練られたストーリーでもないし。 天童作品の入門なら良いかもしれませんが、永遠の仔を読んでしまった方は、この物語では物足りないと思います。