「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

モンスター

モンスター (幻冬舎文庫)/幻冬舎
¥760
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今のとこ外れなしの百田先生の作品。 主人公はかつてその醜い容姿ゆえに不遇の青春時代を過ごした女性。 自らの手で美を勝ち取った現在の彼女が過去の凄惨な日々を思い出す形式で物語は進む。 男は多少見た目が悪くても、勉強、スポーツ、笑い、で挽回出来て、社会的に認められるのに対して、女性の幸せは見た目で決まる、というのは良く聞く話だけど、この物語は、それがどういうことかを小学生から社会人まで見せてくれる。 この主人公はちょっとしたブスではなく、洒落にならないくらい不細工なので、あらゆる面で不遇な目にあい続ける。学校ではいじめられるし、友達も出来ないし、もちろん彼氏なんて出来るわけがない。多少勉強が出来ても容姿が悪過ぎて一流企業に入ることも出来ない。 もちろん、この話はフィクションだけども、実際にあり得る話であると思う。顔が美人なだけで良い会社に入れる訳ではないと思うけど、恐ろしほど醜い容姿をもっている女性はなかなか雇ってもらえないのが現状だと、思う。。。実感として。。。女性の容姿は社内のオッサン達の仕事のモチベーションに大きくかかわってくるから、大きな選考要素に成りえるのも、仕方ないかもしれない。道徳的には許されちゃいけないんだけど、企業って私的団体だからね、好みを通しても良いんだよね。 この女性は、何とか入った薄給会社で倹約に倹約を重ね、少しずつ美容整形で美を獲得していく。 美しくなった途端、男たちの眼が変わり、態度が変わり、自分の人生が変わっていく。 見た目が変わっただけで、「君は頭がいい」とか「内面を好きなんだよ」と言い寄ってくる男の多いこと。 実際、男って見た目が好きだからセックスしたいです、といって口説く訳にはいかない。(それが何故かは誰も分からない)だから、何かしら他の理由をみつけて、内面を好き、という体裁を保ちたがるものだ。(見た目は代替可能性が高いけど、中身はかけがえがないからか??んなこたぁない)その姿が実に滑稽に描かれていて楽しめる。 物語は予想通り、彼女の破滅の方向に進んでいくんだけど、ここで考えてしまうのが、「容姿に幸せの大半を左右されてしまう女人生の理不尽さ」。というのが第一の主題。でも隠れた主題は「容姿だけに魅かれて身を滅ぼしてしまう男人生の馬鹿馬鹿しさ」なんじゃないかと思う。どれだけ献身的で、どれだけ自分を大事にしてくれて、どれだけ一緒にいて幸せな恋人がいても、目の前で、抜群のスタイルで、目がくらむほどの美貌をもっている女性が誘惑してきたら、99%の男はそちらへ行ってしまうだろう。 そして、他の女性と関係を持つことは今までの幸せを根底から破壊する力を持つ。こうして、世界に一人だけの大切な人と巡り合えた幸せを男は自ら破壊してしまうのだ。 男が自分の人生の損得勘定も出来ないほど美に関して途方もないほどの馬鹿なので、女性もこの主人公の様に美にどこまでも悩まされ続けることになる。悪いのは、というか非道徳的なのは、男である、と僕は思う。 生まれた時に持っていた容姿だけで、幸せの大半を左右されてしまう世界のなんて理不尽なこと。 どんな幸せも、目の前の美貌に全てを捨ててしまう世界のなんて馬鹿馬鹿しいこと。 女がどうしても必要な男、男がどうしても必要な女、この物語を読むと、人間はどこまでも動物なのだなぁと思わされる。でも、その認識がどうしても正しいんだと思う。