「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

深夜特急5

深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫)/沢木 耕太郎
¥460
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自らの身の丈を知る旅から、一つの物語を結ぶ旅へと脱皮していく5巻。一人の画家を巡って、繰り広げられた愛の物語が、一人の旅人によって掘り起こされ、解放される・・・。 イスタンブールという地の持つパワーは実体験として知っているので、そこで伸び伸びと生活をする沢木耕太郎の画が目に浮かぶようだった。たしかに、あそこは地の足のついた生活がありながら、異空間へも足を延ばすことが出来、日本的な味覚を懐かしむことも出来る街であった。今思えば、一番のイスタンブールの魅力は、食に溢れていることだったような気がする。どこもかしこも飲食店から良い匂いがし、実際に食べてみても美味しく、物価も安い。コーヒーもティーも楽しむことが出来、いつの時間も人であふれていた・・・人間が生活している空間に旅人でも入っていきやすい空気が醸成されていたような気がする。 5巻で印象的なのはP197 旅がもし本当に人生に似ているものなら、旅には旅の生涯というものがあるのかもしれない。人の一生に幼年期があり、少年期があり、青年期があり、壮年期があり、老年期があるように、長い旅にもそれに似た移り変わりがあるのかもしれない。私の旅はたぶん青年期を終えつつあるのだ、何を経験しても新鮮で、どんな些細なことでも心を震わせていた時期はすでに終わっていたのだ。中略、この時、私は初めて、旅の終わりをどのようにするかを考えるようになったといえるのかもしれなかった。 インド旅行中に読んだから、より一層共感できたのかもしれない。 旅を終わらせること。それは一つの線を引くこと。線を引くことは一つの意味を与えることである。 彼がこの旅にどのような意味を与えるか・・・この旅の焦点は、どうやって期限のない旅を締めくくられるのか、に移ったようだ。