「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

天体の回転について

天体の回転について (ハヤカワ文庫 JA コ 3-3)/小林 泰三
¥819
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小林泰三先生のSF文庫は初挑戦。科学とグロの融合した話は多々あったけど、近未来は宇宙的な発想の短編が詰め込まれているのが本作品。 天体の回転について 科学が頂点を極めてから年月が経った頃の物語。科学を捨てた世の中で、科学の遺品を辿る主人公、科学の結晶体である萌え萌えなヒロイン。たまらない要素がふんだんに詰まっている表題作。 軌道エレベーターの説明なんかは、天体にかかる物理法則なんかが丁寧に説明されてて、非常に勉強になる。 灰色の車輪 アイザックアシモフSF小説に出てくるロボット工学三原則にのっとってロボット開発が行われている未来の惑星の話。人間の知能を超えたロボットが生み出すロボットが人間に制御可能なのか・・・科学の暴走に警鐘を鳴らす。ロボット三原則の網の目をうまくすり抜ける高知能で人間味あふれるロボットが、三原則の為に愛を失う姿がみていて痛ましい。なんだかせつなくなるお話。 あの日 地球の物理法則を何も知らない別の星の作家が最後のどんでん返しに「舞台が地球でならありえる」というトリックを使おうと思案するお話。着眼点が凄く面白い。 最後のオチが「火星だった」っていうようなトリックは結構昔からあったのだなぁ。火星を知らない僕たちは「そんなのなんでもありじゃねぇか」と思ってしまうけど、火星人にとっては「んなこと火星でもありえないよ」と思うのかもしれない。そんな逆の目線で書かれたお話。知的で笑える、すごくセンスが良い。 性交体験者 エログロSF。ちょっと女性が凶暴なお話はあんまり耐性がなかった・・・ 銀の舟 王ロバ的なオチ・・・ 三〇〇万 凶暴な宇宙侵略者が実は騎士道精神あふれていた、というお話。地球人の凶暴性が浮き彫りになって恐ろしい。 この宇宙人、ダイの大冒険の敵みたいだね。 盗まれた昨日 人間の脳に短期記憶装置しかなったとしたら・・・忘れてしまったことをすぐに忘れてしまう・・・何を忘れたかも忘れてしまう・・・またそれを忘れる・・・・の無限ループ。 起源の人がメモをしていなかったら、本当に何も思い出せぬまま、消え去ってしまっただろう。 そんな思考実験から派生した話かもしれない。人格とは何かをさらっと問い詰めてくる手法は、これぞ小林泰三ワールドだ。長期記憶装置をつけかえれば人格も変わるのか・・・・。小説という性質上、主観で描写しなきゃならなかったから、厳密には人格が変わったか、なんて分からないけど、すごく面白い発想だった。 時空争奪 川は河口から生まれるという話から時間も未来から過去がつくられるという論理へ飛躍していく・・・ 何が何だか分からないけど説得させられてしまう・・・ え・・・そもそも・・・川のクダリから間違ってるの・・・・? 超論理SF、酔歩する男的な混乱に落とされてしまった。 これは粒ぞろい! 小林泰三ワールド万歳!!!!