「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

秋の牢獄

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)/恒川 光太郎
¥540
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やっぱり恒川光太郎の短編集は幻想的で読んでいると夢心地になる。 同じ日が繰り返されるという設定は今までも何回でも聞いたことあるけど、同じ世界に迷い込んだ人間が複数いるという設定は新しい。 この設定だからこそ起る、恐ろしい事象の数々。 同じ言葉を繰り返すロボットたち 自分の置かれた現状を相談しても、毎回同じ言葉を返してくる。誰に言ってもそうなのだ、彼らにとっては初めて聞く言葉であり初めて口に出すアドバイスなのだから。でも牢獄に閉じ込められた者にとって、その言葉ほど自分の孤独を増長するものはない。もう彼らには感情がないとしか思えなくなるだろう。毎回毎回きめられたことにきめられた反応を示すロボットでしかない。そんな世界で自分だけが孤独なのだと知る。 妻の浮気を止められない夫 その日、妻は浮気をする。止めても次の日の朝にはリセットされて、またすぐ浮気しに行く。 浮気現場に直接割り込んでも、浮気相手を殺害しても、その場はやめるかもしれないけど、朝起きたらまたしれっと浮気をしにいく妻。 自分では妻の浮気の意思を止めることができない。 永遠に続く浮気地獄。 憎み合う牢獄の住人達 牢獄の住人同士が憎み合い、殴り合い、朝が来て全て元通りになっても、彼らの記憶はなくならない。また目が覚めても憎しみは消えない。いつかどちらかが殺害してしまうかもしれない。殺された経験は脳に焼き付いている、その憎悪はあくる日の地獄の殺気に変わるだろう。彼らの憎しみは死しても消えない、まさに永遠の憎悪。想像しただけでも恐ろしい。 とまぁ、この辺に感心してしまった。 さらっと読むには面白い本。