「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

予告探偵 西郷家の謎

予告探偵―西郷家の謎 (中公文庫)/太田 忠司
¥720
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あなたは読了後、この本を壁に投げつけたくなる! という帯の煽り文句につられてまんまと買ってしまった。 どんな本なんだよと期待に胸を膨らませて読む。 設定はすごくありがちな感じ。 高慢無礼傲岸不遜唯我独尊で知能が高く、力も強い、主人公の予告探偵 摩神尊 売文家で常識人、摩神に振り回されっぱなしの常識人 木塚東吾 物語はこの木塚東吾の回想的記述の形式で綴られる。 そして、またこの文章が良い。読む者を惹きつける。 物語の中でこの木塚が「古きを好む旧弊主義者」と摩神から揶揄されるシーンが散見されるのだけれども、この物語自体が木塚に描かれたという形式をとっているのだから、文章も自然、旧弊的な印象となる。 でも、個人的にはそれがすごく良かった。格調高いというか、雅やかというか、読んでいて、しっくりくる。かちっとしまる。 ラノベでもよくありそうなキャラばかりが集まっているけど、ラノベのような軽い印象にならないのは、やはり文章の巧さなんだと思う。ラノベになると摩神みたいなキャラは暴走して、すこし滑稽に描かれたりするけど、この物語の中での摩神は完璧すぎて、いじる隙がない。文章をかたくすることで、簡単に摩神をこき下ろすことを避けているきらいも感じられた。 ミステリーとしては真新しいモノはなかったけど、この文体が非常に気に入ったので、続編があったら読みたいな、と最後の章までは思っていた。 そう、最後の章までは・・・ このまま終わるのかと思いきや・・・ 最後の大どんでん返し!!!! まさにどんでん返し!!!! 全部ひっくり返るーーーーーーーー。 ええぇぇえぇ??????!! ってか、いる?そのどんでん返し!!!!???? と思った。 壁に投げつけたくなるような怒りは全く生まれなかったけど、「なんだそりゃ」という大きな脱力感が生まれた。 解説にも書いてあるけど、ミステリーというのはある条件を与えられて、そこの中で推理を楽しむ。 主人公が探偵で、助手がいてー、名家の当主といろいろあってー、密室で跡取りが殺されてー、さあ犯人はだれだ、みたいな。 でも、この小説は、与えられた内容=箱の中身を楽しんだ後、箱だと思っていたものを注意深くみてみたら、絵だった・・・。みたいな感じ。 ちょっと違うか・・・・。 まぁ、結構衝撃的だったけど、筆者の経歴を見れば、うなずける。ショート・ショートを書いていた人だったのだ。 ショート・ショートにありそー、このオチー。 一番最初から、すんごい細かい設定も気にして、違和感を覚えていた人なら、最後のどんでん返しに「なるほど」と思えるかもしれないけど、ほとんどの人には、????ばかりが浮かぶラストだと思う。 まぁ、でも総合すると良い小説だったなー。 続編も必ず読む。