「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

塩狩峠

塩狩峠 (新潮文庫)/三浦 綾子
¥660
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長く語り継がれる名作を読んでみた。

三浦綾子による大作。

まだ四民平等の理念が行き渡っていないくらいの時代背景。

ある犠牲に散った青年の生きざまを描いた作品。

主人公の信夫と吉川の会話が読んでいてすごく清々しい。まじめで優しくて爽やかだ。

登場人物にすごく好感が持てるし、風景描写や感情表現なんかもバランスがとても良い。

とにかく書き方が上手い!

早く続きが読みたいと思わせる書き方だ。

キリスト教に生きた青年の最期を描くための作品なのだと思うが、彼がキリスト教を認めるのはずいぶん後半。

序盤、中盤はキリスト教に対して、ごく一般的な印象しかもたない青年だった。

「なんでそんなこと言いきれるの?」とか「信仰ってそんな大事?」とか。

時代背景は昔なんだけど、現代の若者が当然思うようなことを彼も言う。だからすごく共感できる。

そんな彼がどんなふうにキリシタンになるのか、っていうのが僕にとって一番興味深いところだったんだけど・・・。

物語の中では結構さらっと流れてしまう。結局、心が疲れている時に、慰めてくれたから・・・。ぐらいの根拠しかなかったように感じた。

そこから主人公のキャラクターが急に変貌する。素直で朴訥で清らかな彼が、超人みたいになってしまう。自らを律することに何の苦悩もなく、何の迷いもない、キリスト教に取りつかれた人間になってしまう。

そこがすごく小説っぽい流れだった。

人生をかけて一人の女性を愛し続けるところは物語としてすごく面白かったけど、別にそれはキリスト教とは関係ないからなぁ。

キリスト教ではなくても楽しめる作品だけれども、キリスト教の人にしか分からない理屈がそこにはあるのかもしれない。とくにどの宗教にも思い入れのない自分には?がつく個所が多かった。

途中まではすごく良かった。恋愛の話も良かった。でも、キリスト教に回心するところが納得いかなかった。

面白い小説であることは間違いない。

そして、それはフィクションかノンフィクションか、ということとは別次元である。