「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

今までの常識が覆る『デフレの正体』

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)/藻谷 浩介
¥760
Amazon.co.jp

この本は面白い!!

絶対にオススメ!

みんなに読んでほしい。

今の日本の閉塞感を打破するためには景気を良くするしかない、という常識を一蹴してくれる。

この本によれば、今の日本の問題点は

生産年齢人口の減少

の一点に尽きる。

この問題が続くかぎり、景気は良くならないのだ。

リーマンショック以前までの好景気が庶民に実感のない経済成長だったのもこのためだ。

輸出企業のもうけが結局、富裕高齢層に回っているだけで、消費してくれる若者に回ってこなかったからだ。

輸出企業儲ける(工場の海外移転派遣労働者採用、新興国の躍進などの要因によって)→GDP上がる→株価上がる→配当上がる→高齢富裕層の株主へ富が分配される→消費志向の若者には金が回ってこない→内需依存企業全滅

というような図式かな・・・。

この本の面白いところは昨今の経済常識を超毒舌で一刀両断してくるところと、それに対する解決案を提示してくれるところだ。

解決策は以下の3点

①高齢富裕層から若者への富の再分配

今の高齢富裕層の貯蓄は将来のリスクのために使われることはない。さらに彼らがなくなる時(80~90歳くらい)には子供たちも60前後になっているので、また老後の不安のために貯蓄に回されることになる。

これらの富が使われないと、日本経済は全く流動性を取り戻すことはない。逆に言えば、それが流れれば経済は活性化する。なぜなら彼らの総資産は1400兆円にも上るのだから。

彼らの富を市場へ持ち込むためには高齢者に魅力的な商品やサービスを生み出すことだ。

さらに、相続税の対策も考えられる。

②女性の社会進出

人口減少は出生率上昇では止められない、なぜなら産む主体の数が世代ごとにどんどん減少しているから。その絶対量の減少を埋めるには並大抵の出生率の上昇では済まないのだ。

人口減少による生産年齢人口の減少を食い止める方法は一つ、いま生産に回っていない人を生産に回すことだ。つまり女性の社会進出をもっと進めることなのだ。

女性の社会進出は出生率の減少の一因とされているが、著書の中で反証データが提示される。共働きになることで収入が増え、子供を増やす余裕が生まれる、ゆえに出生率が増える、とも言えるのだ。

生産年齢人口と出生率の増加、その両輪が長期的な繁栄に不可欠だ。

③日本を観光立国に

人口の減少は外国人の受け入れで賄えという議論もあるが、長期的にみると実現不可能な話らしい。中国は一人っ子政策の影響で生産年齢人口の減少が目に見えている。インドもこのまま経済成長を続ければ、人口が減少するのも歴史が証明している。長い目で考えると、今の途上国の日本と同じ問題を抱えることになるのだ。そんな各国の情勢に頼ることなく、日本だけで自立しよう、そうした時に、日本独自の価値を高めることが重要になってくるわけだ。価値とは儲けのことだけでなく、雇用やブランドイメージだったりする。そういった価値を高めるためには機械化で大量生産する重厚な製造業よりも、人間をたくさんやとって複雑にしたサービス業や独自のブランドイメージがついた小物の方が効率が良い。外国人訪問客を増やし、国内のサービス、ブランドイメージを高価値で提供し、国内の金周りを活発化させるべきなのだ。イメージはイタリアやスイス。

という感じ。

多少、暴論と感じるところもあるけども、彼の間違いより、景気がよくなれば全てハッピーという楽観論の欠陥の方が際立って見えるようになる。

まさに目から鱗の連続だった。

ただ、問題点を指摘して終わりという論評が多い中で、常識とはかけはなれた着想から解決策を提示した著書は間違いなく良書だと思う。間違っていてもここから議論が生まれる余地があるのだから。

間違えないようにありきたりなことを書くよりも、大胆に間違っていた方が価値がある。

「あ」はあ行である

という命題は絶対に間違いがないが、何の情報量も含んでいない。

何らかの情報量を含むということは間違いのリスクを孕んでいるということなのだ。

その意味で、この本は非常に挑戦的で情報満載でリスク満載な本だった。

この著者は日本の各地を自腹で歩き、蟻の眼で経済を観てきた。

そして、国のデータを組み合わせて、トンボの眼で複眼的に経済を分析した。

いま、鳥の眼で日本の行く末を100年向こうまで見渡そうとしている。

全体を貫いているのは底知れぬ日本という国への愛情だった。

日本はもう駄目だから海外へ行きたい、と今の会社を選んだ僕にとって、彼のアプローチはかなり衝撃的だった。彼のように100年の眼で見れば、海外のどこの国だっていずれ日本と同じ問題に直面することになるのだ。どこにも逃げ場はない、と覚悟した時に、解決策を考える姿勢が整うものらしい。

自分の浅はかさを恥じると同時に、まだまだ変革を必要としている世界に希望を感じることもできた。

もう一度言いたい。

ぜひ読んでください。

そこから世界が変わる。