「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

イワンのばか

ロシアの民話集です。 イソップ童話の様に教訓めいた小話が8遍収録されています。

どのお話も、素直に、慎ましく、穏やかに暮らしていきましょうというメッセージが込められています。金に目がくらんで滅びる男、土地を手にしようとして過労死してしまう男、権力を求めて失墜する男、どれも間抜けな”男”の話ばかり。

19世紀から強欲を戒め、節制を勧める教訓がこんなにも語られているにも関わらず、依然として世の中は物欲に駆動され、欲望に満たされています。こうなってくると人間は”欲望に駆動されながらも、欲望を節制したいという望みを持ち続けたい”という欲望を持っているとしか説明ができません。

この民話で語られているモチーフが、手の変え品を変え、場所を変え職業を変え、現代までの小説、映画、ドラマによって再録されているとも言えます。民話は人類が多少持ち合わせている良心の源流なのかもしれません。「イワンのばか」が標準的な人間である、と評価される世界になって初めて、この民話は忘れられていくのでしょう。とすると、100年後も読み継がれるのは間違いなさそうです。