「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

封印再度/森博嗣

森博嗣のS&Mシリーズ第5作目。前作を読んだのは大学生のときなので、このブログを始めるもっと前です、実に5年ぶりくらいでしょうか。森博嗣先生の本は外れがないので、具体的に読みたいものがないけど、何か面白いもの読みたいってときにうってつけです。

今回の事件は仏画家が住んでいる歴史的建築物の中で起こります。密室殺人が起きる前に居た人物は誰?という意味のWho inside?が題名なのはすぐに分かりますが、封印再度という当て字がどんな意味なのか、は事件の真相が明らかになると分かります。今回もあっと驚く仕掛けがありました。

でも、ファンとしての見所は密室殺人でもパズルのからくりでもなく、犀川先生と西之園萌絵の関係が急速に進展していくところかもしれません。今から13年前の作品なので、インターネットを使うのに電話回線を使用していたり、飲酒運転にそんなに厳しくなかったり、所々小さな違和感がありますが、この二人の奥ゆかしすぎる関係こそが一番のミステリーかもしれません。ちゃんとお互いの好意を確認している訳でもないけど、きっとお互いが好きで、でも態度には出せないけど、周りがお膳立てしくれてて、でも恋人の様なことは食事くらいしかしないっていう関係。今時、中学生の恋愛でもこんなのない気がしますが、そこが読んでいて、歯がゆくて面白い。

森博嗣先生はバリバリの工学博士なので、科学的な叙述に非常に長けていますが、詩や哲学的な叙述も素晴らしすぎて感動します。

”心の眼は静かにあれ”という詩的表現は、秀逸。心の眼っていう表現事態が比喩なのに、眼を静かにするっていうのも一つの擬人法?? 表現技法を二重に使うとくどくなるけど、これは締まりが良いし、意味がすっと頭に入ってくる。

こういう表現をすっと使える理系のミステリー作家って完璧過ぎますね。