「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

そして輝く『ワイルド・ソウル(下)』/垣根涼介

あっという間に読み終えました。物語に勢いがあるので、その流れに追いつこうと夢中になっているうちに読み終えておりました。

上巻では移住先での地獄のような日々が多く描かれていましたが、下巻は彼らの復讐劇が中心なのでサスペンス、ラブストーリー色が強くなってきます。

今現在も南米社会の底辺にうずくまっている日系移民のドキュメンタリーをマスコミに送りつけ、外務省のビルに移民政策の愚を糾弾する横断幕を垂らし、誰も傷つかないようなタイミングでビルの窓ガラスを銃撃する。これが復習第一段階。

何も知らなかった日本国民は、犯人であろう日系移民達が耐えていた艱難辛苦を斟酌し、誰も傷つけないこの復讐劇に同情的になります。

けれども、この復習の目的は日本政府に移民政策の失敗を認めさせることです。 そのために、彼らがとったとんでもない行動とは!?

結末には賛否両論あるようですが、私は清々しい結末だったと思います。それぞれの人間に染み付いた悲しみを拭うには、それぞれの処方箋が必要なはずです。これで日系移民の恨みを全てはらせたわけではありませんが、ようやく晴れやかな気持ちで生きていける、と思えた人間が一人でもいるのなら、それで成功だったのではないでしょうか。

クライマックスの高速道路を突っ走るシーンのスピード感も、もの凄かった。読んでいる間、自分が横になっていたベッドも時速300キロの世界に引き込まれてしまったような気分になり、グルグル情景が浮かびました。

ラストシーンも明るくて前向きなブラジルの良い面が前面に押し出された素敵な締めだったと思います。

ただ、単なるサスペンス、ラブストーリーとして片付けるには、あまりに重い現実を突きつけてくる小説でした。私自身、過去にブラジル移民の人と深く関わったことがあり、彼らの涙の訴えを聞きながら、何も出来なかった、あの時の記憶がよみがえりました。

せっかくなので、備忘録として、はるか地球の裏側でまだ命を張って闘っている日系の同胞へのせめてもの餞として、私が出会った本当のワイルドソウルの記録をここに記します。