「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

久々の面白本『人口減少社会の未来学 内田樹編』

内田樹先生が編者となって、各界の論客を集めた論集です。様々な角度から人口減少について考察されており、大変面白い本でした。各者の論旨のポイントをまとめておきます。

内田樹
「人口減少社会の到来は目に見えているのに、喫緊の論件になっていないことが何よりも問題」
「これから行うのは被害を最小限にする後退戦」

池田清彦
「現生人類はすべて数万年前のせいぜい1万人くらいの人々の子孫、世界的には人口増。日本人が減ることが問題か?」
「地球の環境収容力まで人類は増えて、その後環境が不可に耐えられなくなり、人口は減り、地球全体で定常化する」

井上智
「世界経済は労働者数の頭数ではなく人々の頭脳レベルが決定的に重要な頭脳資本主義に転換していく」
「AIが経済に与える影響は絶大、ここをリードできるかどうかが今後の世界の覇権の鍵となる」

藻谷浩介
「東京の一極集中は高齢者の増加、高齢者になる人は増える一方だが、生産年齢人口は増えていない」
「移民を入れても出生率は増えない。地方から多く産みやすい気風を広げていくしかない」

平川克美
「経済は短期的な損得勘定の問題だが、人口減少は長期的な文明の発展段階に起きる社会構造変化の結果である」
少子化の主要因は晩婚化であり、晩婚化は戦後日本の発展(無縁化、市場化)の結果である」

ブレイディみかこ
「楽しい縮小経済などない、英国は緊縮財政を進んだおかげで、医療も受けられない、餓死する人も増えた」
「経済成長がなければ1930年代の欧州で始まったあの過ちが繰り返されるかもしれない」

隅研吾
「江戸時代における武士階級が21世紀日本における建設業である、彼らは江戸時代から往生できてない」
「建設業(広義には重厚長大産業に携わった全ての人)の暴力性を鎮めないと破滅を招く可能性がある」

平田オリザ
「都会の殺伐とした人間関係ではなく、旧態依然としたネチネチの人間関係でもない、心地よい地方を作らないと人口は増えない」

小田嶋隆
「半世紀後の人口動態グラフを憂慮して素人が経営者目線でペチャクチャ論ずること自体がナンセンス」
「人口問題をロジカルに扱うのであれば女性を産む機械として考えないといけないが、それは消費者市場とかマーケットとか人間を道具としてあつかうことに直結する、人間はモノではない」


蟻の目線、鳥の目線、歴史目線、今ココ目線さまざまな考え方を覗けました。個人的には小田嶋隆さんの議論が好きです。人口動態をモノを売買する経営者のように上から目線で語ることの無意味さというか不遜さ、についての指摘。この発想は全くかけていました。


「何も議論をされていないこと自体が問題」と提起する内田先生。
「こんなことを議論すること自体がおかしい」と提起する小田嶋隆



生命の誕生というのは男と女が本能的に行う営みの結果であるので、その統計をとって多いだの、少ないだの論じるのは神への冒涜というか、「そんなことを俯瞰して憂いているお前は何者やねん」という態度が一番私にはしっくりきました。