「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

R帝国 中村文則

R帝国

R帝国


全力小説家、中村文則の最新作です。
過去の「教団X」ほど話題になっていないのはなぜだろうと思っていましたが、ちょっと読んだ時点でわかりました。

この本、とにかく面白くないです。
面白くない理由を考えます。


R帝国が面白くない理由①
登場人物が魅力的でない。特に矢崎と栗原という男二人が主人公なのですが、彼らが似かよっていて、矢崎の話なのか栗原の話なのかがごっちゃになってきます。これは意識的に似せて書かれているので、ある意味仕方ないのですが、私のように通勤時間中にブツ切れにしか時間が取れない読者にとって、誰が何をしてるのかわからなくなるのは致命傷でした。


R帝国が面白くない理由②
設定が薄い。ディストピアを完成させたR帝国に対して、なんでLなんて貧弱な組織が抵抗できるのかがよくわからなかった。なぜ彼らが国家システムにハッキングできるのか、仲間を増やすことが出来たのか。


R帝国が面白くない理由③
中村文則の世界観が露骨に出過ぎている。世の中は一部の優秀な支配層が動かしていて、その他大勢はチンパンジーで何も考えずに従っているだけ。もしかするとそうなのかもしれない。でもそうじゃないかもしれない。私はそうじゃないと思っている。だから全く共感出来なかった。1部の人間が莫大な富を手にするために、世の中を好きなように動かしているという話は陰謀論と呼ばれています。陰謀論を否定するのは実は非常に難しい。陰謀論を笑い飛ばす風潮でさえも、本当は陰謀論であると言われてしまうから。「陰謀論を信じるのは心理的負担が多すぎるから、わざとばかばかしい陰謀論を流すことで本当の陰謀が隠されているんだ」と言う風に。それでも私は陰謀論に与しない。人間が美味しく食べられるのは1日3食まで、生きられるのは100年まで、親しい友人関係を作れるのは十数人まで、本当に愛せる異性は一人だけ、である以上、無限の富と権力を掌握したいと望む人間が存在するとは思えないから。たとえ実務的に世界を支配できるとしても、すべての富を掌握できるとしても、「それを求める人間」がいないと思うから。


とまぁ、とにかく読んでいて苦痛な作品でした。中村文則先生には世界や政治を語るよりも、もっと人間の内奥の世界を描いて欲しいです。政治とか歴史とかと絡めると急に陳腐は話になってしまうから。