「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

サラリーマンも総理大臣も本当はただの『パッセンジャー』だ

私はめちゃめちゃ好きです、この映画。星5つです。


別の惑星に向かう宇宙船で、到着前に何故か目覚めた男女。彼らが目を覚ましたことに意味はある。と言うような予告を見た記憶があるのですが、実際は全然そんな話ではありません。



究極的なラブストーリーであり、悩める人生の物語です。ちょっとネタバレしつつ感想を述べます。




誰もが孤独を癒すために自分の人生に他人を巻き込もうとする。このことを責めることは誰にも出来ないと私は思う。隣の人に話しかけることですら、彼彼女の人生の邪魔をしていると言えるんだけど、誰もそんなこと気にしない。あなたが何かを食すことで生命が失われているかもしれないし、息を吸うだけで人類の最後の一呼吸を奪ってしまっているかもしれない。でも、そんなこと考えても仕方がない。誰もがお互いに迷惑をかけながらも「素晴らしい人生」を体現したいと願っている。生まれた瞬間から我々は誰かの人生を奪いながら生きているのだ。



私たちはみんな、孤独な宇宙船「地球号」に乗せられているパッセンジャーなのだ。乗りたいと希望して搭乗した人はいない。気が付いたら何故か地球で目が覚めた。目が覚めたらマンモスを石槍で倒す任務を課せられた人もいれば、宮廷で俳句をひたすら読み続けた人もいるだろう、液晶ディスプレイに囲まれて部屋でゲームをしながらピザを食べ続ける人生を送る人もいるだろうし、宇宙船で別の惑星の開拓を夢見る人もいるかもしれない。



彼らはみんな隣にいる誰かにすがって、頼って、愛して、イラついて生きている。限られた選択肢の中から一番良い選択をしたいと願っている。原理的にこの世界の可能性は無限であるが、実はその無限の可能性は我々に開かれてはいない。開かれた有限の可能性の中から、挑戦して失敗して、延々その繰り返しの中で生きているのだ。その有限性は歩いて行ける範囲なのかもしれない、宮廷に住む50人の人間関係かもしれない、毎日ご飯を持ってきてくれる家族だけなのかもしれない、宇宙船で目覚めたもう一人の相手だけなのかもしれない。



パッセンジャー』はSFではなくて、今ここに生きる我々のことを淡々と描いている。宇宙船で目覚めた二人はわたしであり、あなたなのだ。サラリーマンも総理大臣も社長さんもモーニング娘もみんなパッセンジャーなのだ。



「素晴らしい人生!」そう言えれば、どんな有限性の中にも無限が見いだせるのではないだろうか。





何はともあれジェニファー・ローレンスが超絶美女でした。彼女の映画は全部観たいと思います。