「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

ROCK AND ROLL HERO 桑田佳祐

以前リクエストをいただいたので、桑田佳祐の「ROCK AND ROLL HERO」のレビューをしたいと思います。随分時間が経ってすいません。いつも言っていますが、私は桑田佳祐を日本が誇る大天才の一人だと思っています。もう圧倒的です。神様です。だから最近の凋落が悲しいのです。桑田佳祐ソロの最盛期に満を持して発表された名盤「ROCK AND ROLL HERO」について語ります。

ROCK AND ROLL HERO

ROCK AND ROLL HERO



HOLD ON (It's Alright)
いきなりですが、この曲がこのアルバムの最高傑作だと思います。シャウトも皮肉めいた歌い方も唯一無二です。エレキギターのリフもシンプル単純明快だけどカッコイイ、ピアノとの相性も抜群。社会風刺、全共闘世代の批判、ラブソングばかり歌っている自分への揶揄・自己言及。これこそ桑田佳祐のロックンロール!誰も真似できない。近づくことさえできない。絶対的な桑田佳祐ここにあり!


ROCK AND ROLL HERO
するどいギターのイントロが刺さりますね。でもこの曲の主役はピアノ。なので中盤からはどうしてもポップっぽくなってしまう。この曲も社会風刺がビシビシ効いてくるのですが、全曲のHOLD ONが網羅しすぎていて、ちょっと霞むのが正直なところ。後は修羅場だの歌い方が好きです。



或る日路上で
交通事故の話をこんな風に歌にできちゃうところが桑田佳祐の天才たる所以です。Bメロなんて最高ですよね。

安全運転を無視したような不良の姐ちゃんと社会正義の名において勝負する

というなんか情けないワードをあんなにカッコイイメロディに載せちゃうところが最高。
そして極め付けは大サビ!
出会い頭のブス」てwwwww



影法師
童謡みたいな不思議な曲調です。この曲はC調なのですが、C-5というコードが使わています。ドミソではなくドミソファ#です。Cを連続して使うときはC、C+5、C6、C7という進行がよく使われます。ドミソにソ♯、ラ、シ♭が追加されていくわけですね。でもC-5は初めて見た。それがこの曲の不思議な感じの要因です。神話の世界のような寂しさが漂いますね。



BLUE MONDAY
イントロ最高。伴奏も歌も歌詞も最高にCOOLですね。カッコよくてエロティックに攻めたところで、「だめさ今日は月曜日」という桑田佳祐のだめな感じが追加されて、ファンにはたまらない構造になっています。
生まれたときからゲットーが好きさ」ってなんだよww



地下室のメロディ
この曲もハチャメチャなようでとても良くできています。AメロはE調。Bメロで突然C調に転調、B7を使ってサビでE調に帰ってきている。サビのメロディはめちゃくちゃキャッチーですよね。



東京
シングルカットされた有名な曲ですが、あまり好きではありません。演歌っぽいというか、じれったいというか。。。間奏のソロギターはあえて完全に音を外すというテクニックで聴く者の頭を混乱させようとしています。桑田佳祐の策略です。



JAIL ~奇妙な果実~
たぶん桑田佳祐なりの”遊び”です。




東京ジプシーローズ

イントロのギターもあやしい、スネアのリズムも訛っている、歌声もいやらしい、歌詞も下ネタ。その対比でサビがちびるほどカッコイイ!!!!一生聴いていたい。10分間ぐらい同じサビを続けて欲しい。単純に表拍、裏拍というリズムではない。これはあえてずらしている。そのズレから縦に綺麗に細かく刻まれるリズムに移行するから気持ち良いのか。サビのあとの訛りがあるから、気持ち良いのか。もうよくわからない。天才の所業。



どん底のブルース
これはロックンロールではない。ブルースなの?フォークソングじゃない?「あぁ人間なんて嫌だ!」というサビなんだけど、やっぱり歌の上手さが際立つ。玉置さんが歌っても映えそうな曲ですね。




夏の日の少年

東京のカップリング曲でした。同じシングルに収録されていた『可愛いミーナ』が素晴らしすぎて霞みがちですが、この曲もまた素晴らしい。爽やかだけどちょっぴり切ない青春の夏休みをそのまま表現したような曲。



質量とエネルギーの等価性
『さくら』に収録されていそうな、ハチャメチャな曲です。馬鹿を通り越して天才を通り越して、逆に馬鹿なんじゃないかと思います。「イデアの上昇と下降」ってなんだよwwっていうか全歌詞意味不明ですwwでも、メロディとリズムはアルバムで一番素晴らしいと私は思う。



ありがとう
最後に収録されるスローバラードはいつも名曲なのですが、この曲ははっきりいって期待はずれです。一番聴いていないと思う。



繊細な音楽的才能、社会や自然科学への鋭い洞察、さらに緩い下ネタ的遊び心が良い感じに合わさった名盤です。桑田佳祐にしか絶対に出せない味ですね。