「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

真の絶望は愛情から生まれる『遮光』/中村文則

遮光 (新潮文庫)

遮光 (新潮文庫)

幼いころに両親を亡くした主人公。大学生になり出逢った彼女も交通事故で亡くす。彼女が亡くなったことを受け入れられず、あたかも彼女がまだ存在するかのように周囲に振る舞い続ける狂ったお話。

狂っています。完全にイっちゃってます。でも、イッちゃっている人の思考回路が生々しく描かれていて、なんとなく、そんな振る舞いをしてもしょうがないような気がしてくる。彼の喪失感が溢れ出して、読者の日常に侵食してくる。

金もある、友人もいる、おそらくモテる、他の女性から言い寄られたりもする、でも、そんなことじゃ満たされない人間の絶望。何の救いもないお話ですが、そこまで一人の人を愛し続けることができる可能性の中に光を見いだせるのかもしれません。