「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

思い出したくない過去を持つ人は絶対読むべき『何もかも憂鬱な夜に』/中村文則

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

ハマりまくってます中村文則。この本も一気読みです。


施設で育った主人公は刑務官。同じ施設で育った友人を自殺で失った過去を持つ。主人公の一人称で物語は進み、彼らの内面に深く深く入り込んでいく。


一定数の人が強烈に共感できる小説だと思います。特に友人、真下の日記。思春期の本当にどうしようもないドロドロとした葛藤、妬み、嫉み、焦燥と虚無感。私が書いていた日記が転載されたのかと思ったほどです。


誰もが自分は特別な人間と思いながら育ち、思春期の頃に自己評価と他者評価の違いが見えてくる。そこで頑張ってもどうにもならない能力のない自分にほとほと呆れる。自分は自分のことを諦められないくらい好きなんだけど、他の奴らは自分なんかに興味なく、やつら同志で上手く楽しくやっているように見える。自分はどうしようもなくモテない。マジでモテない。そんな青春時代を送ったあなたにはど真ん中ストライクの小説です。


この小説は光と闇、どちらも精緻に描いているけれども。救いの方、つまり光はいつでも誰かの愛情として描かれているようです。どうしようもない境遇の中で「この世界には素晴らしいものがある」と教えてくれた施設長、土砂降りの雨の中気がつけばよりそってくれた元カノ、死刑囚山井にとってもどんな時でも面倒をみてくれる主任と主人公と言う存在があった。自分のことを振り返っても、思春期のドロドロから抜け出せたのは自分をそのまま認めてくれる恋人が出来た時から、だった様な気がします。その時から、自分は一人じゃないというか、このままで大丈夫なんだとようやく自分を認めてあげることが出来たような、そんな気がします。愛されないと生きていけない、なんてなんて弱弱しい生き物だろう。



何もかも憂鬱で眠れない夜、自分がどうしようもなく嫌いな日、そんな時に寄り添ってくれる優しい小説です。ぜひご一読ください。