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「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

あなたを塗り替える小説『掏摸』/中村文則

小説

本を読むのが好きというと、若い頃は「偉いね」と褒められることがありました。今でも先輩や上司に「今時本を読むやつは珍しいな」と言われたりします。

でも、私にとって読書はご飯を食べたり、歯を磨いたり、風呂に入ったりするのと同じように、当たり前にこの生活に組み込まれているものです。それは勉強のためでも、出世のためでもなく、ただ読書という体験が私にとって不可欠だから読んでいるのです。


なぜ私の人生に読書は不可欠なのか。そんなことを思い出させてくれた本です。


掏摸(スリ) (河出文庫)

掏摸(スリ) (河出文庫)


本といってもいろいろな本があります。哲学書、ビジネス書、エッセイ集、小説。小説というと娯楽のイメージが強いものです。物語を楽しむ。エンターテインメントであると。たしかにそういう一面はあります。でも、小説には他の本にはない魅力、別の人生を追体験できる、という魅力があります。

中村文則の『掏摸』は凄まじい圧力で読者に強烈なもう一つの人生を追体験させます。この物語は読者の今まで培った価値観と真っ向から衝突をしてきます。この物語から身をそらすこともできる。でも味わってしまうと、もうあなたは戻れない。

読む前の自分と読んだ後の自分が違う自分になっている。人生を追体験するとはそういうことです。素晴らしい小説とはそういう小説をいうのです。この『掏摸』は私の人生を塗り替えました。今まで考えていた悩み、捉えられていた感情から一歩引いた視座をもらったような安心感。内緒で舞台を裏から見ているような背徳感と疎外感。


一体何を言っているのか分からない??なら読んでみると良い。
これは本当に恐ろしい力を持った小説です。

世界の全てを味わえ!