「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

私の人生を変えた一冊『日本を捨てて、日本を知った』

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
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今では読書記録を付ける為にブログを書くほど、本が好きな人間になりましたが、高校生までは全く本を読まない人間でした。こまったさんシリーズとかずっこけ三人組とか怪傑ゾロリとか、小学校の授業の図書の時間に手に取ってみても、どうしても続きを読む気になれないの。ああいう本を読んでた人たちは大人になっても読書好きのままなのだろうか…。

まぁいいや。高校生になってから、趣味ではなく勉強の位置づけで意識的に小説を読み始めました。海外の古典はドストエフスキーシェイクスピア、日本の文学は司馬遼太郎藤沢周平。面白くてどっぷりつかるというよりも、ふむふむこういう考え方があるのかと感心する日々でした。

一方で、私は音楽が好きでした。15歳の時に見た浜田省吾の『夏の終わり』のMVを観て、こんなにカッコいいおじさんがいるのかと衝撃を受けました。『夏の終わり』の歌い出し

サンディエゴフリーウェイを南へ走ってる。国境線、超えたら砂埃舞うメキシコ

という部分が最高にカッコいい。オープンカーで旅をする浜田省吾。プールサイドでバンド演奏をするメンバー。彼らは私の憧れになりました。とにかく彼らのようにメキシコの国境で渋い演奏がしたくて。手始めに英語の勉強を始めました(←バカ)

英会話スクールに通い英語を勉強する傍ら、流行の洋画を見まくりました。チアーズ!とかスクールオブロックとかアメリカンパイとか。そうするとアメリカ的なものに対する憧れがどんどん強くなり、とにかく日本はつまらなくて、海外サイコ―、みたいな、いけすかない帰国子女キャラになっていました。

私にとって海外=アメリカであり、アメリカもイギリスもオーストラリアもフランスも全て同じで、欧米的価値観は全て崇拝の対象でした。見た目はかっこいいし、音楽はクールだし、映画は面白いし、街はオシャレだし、日本ってホントつまんねーなと。短期留学で念願のサンディエゴフリーウェイ訪問も果たし、私の心は全て欧米に向いていました。

そんな時に、なぜか手に取ったのがこの本です。

日本を捨てて、日本を知った

日本を捨てて、日本を知った

なんでだろう。留学を終えて、最高に楽しくて。将来は絶対、ロサンゼルスに住んでやるんだと思っていた矢先。なぜか、この本を手にしました。

もう10年以上も前の話なので、内容はしっかり覚えていないのですが、雷に打たれるような衝撃だけははっきり覚えています。私が今まで盲目的に信じていた欧米信仰がいっきに崩れ去りました。なんで日本にいる私が洋画に夢中なのか、なんでみんなが英語を勉強しているのか、そんな歴史の文脈を何も知らないまま、のうのうと生きていた自分が恥ずかしくなりました。

その衝撃を内に抑え込むことが出来ず、ほとばしる思いを文章にして、コンクールに応募したところ、運よく入選を果たしました。まぁその話はいいや。

そこから私は一気に右傾化しました。今ではネット右翼なんて言葉があって、ネットを観れば右翼的な考え方だらけで何も真新しくないのですが、当時はメディアも学校もみんな左で、保守の考え方がすごく衝撃的だったのです。様々な歴史の本を読んで、大学は政治学を専攻することになりました。

政治学科で政治哲学という学問に出逢って、私の考えはどんどん修正されていくのですが、この本による衝撃がなかったら私は政治学を学んでいないし、政治哲学にも出会えていなかった。政治哲学に出会えていないと、本を読む喜びにも出会えなかったと思うのです。


おそらく今この本を読んだら「何を極端なことを言ってるんだ」と一蹴するかもしれません。でも高校生の私にとっては、今までの生き方を全てひっくり返されるほど、凄まじい熱量と情熱を感じさせる本でした。そこからの極端な右傾化と政治哲学を学んだことによる批判的精神の大きな振れ幅が、その後の生き方のバランス感覚を与えてくれたような気がするのです。

青春の一冊って、こういうものじゃないのかな。