「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

Mr.Children『Reflection』の衝撃

前作「an imitation blad orange」を聴いた時、多くのファンは大変喜んだ、でもその一方で、「あぁ、うん、良い曲もあるし、うん」と自分自身を納得させようとしたに違いありません。今までのPopなミスチルは「SuperMarketFantasy」で頂点を極めたことは誰の目にも明らかだったし、一曲一曲の完成度で言えば「SENSE」を超えるアルバムはもう作れないのではないか、とも思えた。しかし、2015年6月。彼らは「深海」も「SENSE」も超える史上最高のアルバム「Reflection」を世に出しました。この衝撃は、今年一番のニュースと言って良いほど。「未完」「fantasy」「幻聴」のロック三部作は、尾崎豊の「壊れた扉から」に収録されている「路上のルール」「Freeze Moon」「Driving ALl Night」に匹敵する熱量とクオリティ。ミスチル史上最高傑作であると同時に、私が今まで聴いた中で最も素晴らしいアルバムのうちの一つです。

1、未完
壮大な物語の始まりを感じさせる軽快なアコギのカッティング。二回目のAメロ。「いつか逃げ出してやるのにな 尖らせた八重歯 その日までしまう」の部分。叫び声と歌声のちょうど中間。音程をギリギリ崩すことなく叫んでいる様は理性をギリギリ保ちながら全てを放り出したくなる心情を見事に表現していると思う。もはやサビの歌声はヤケクソだ。「いつか辿り着く 胸の中の約束の場所へ」というキーワードは浜田省吾の「家路」を彷彿とさせる。爽快かつ豪快で、汗まみれでグチャグチャになりながらも芸術的にまとまった素晴らしい一曲。アルバム聴き始め一曲目でもう感無量。ツアーのタイトルになるほどの曲をいきなりぶちかまして大丈夫か!いやいや、これだけじゃ全然びくともしないのが、「Reflection」です。

2、FIGHT CLUB
ファイトクラブのブラピに憧れる」という男子あるあるを歌詞に埋め込んだ腕はさすがという他ない。「ランニングハイ」と通じる疾走感。前作に入っていたら代表的な曲になっていたかもしれないけど、今回は強烈な曲が多すぎて分が悪かった。

3、斜陽
マイナー長で、リズムは細かく刻みながらも、メロディのテンポはスローで演歌/歌謡曲っぽい雰囲気もある。桑田佳祐のソロっぽい雰囲気。「東京」の系列。

4、Melody
「足音」のシングルに収録されていたミスチルのハッピーPOPSの見本のような曲。アルバムの中に入るとまた色合いが違って聴こえるから不思議だ。コード進行は非常に在り来たりでシンプルなんだけど、一番のサビ「洗うように」二番のサビ「ありはしないと」最後のサビ「塗り替える」「バラ色に」の部分。ここの音階の飛躍がまさに心を洗うようなメロディで、幸せな気持ちにしてくれる。まさに悲しみを喜びに変えるメロディそのもの。楽しい帰り道は楽しい気持ちを後押ししてくれるし、悲しい帰り道は悲しさを慰めてくれるそんな優しい曲。

5、蜘蛛の糸
最初に聴いたときは、何とも上にも下にも伸びきらず、煮え切らないメロディだと思っていたけども、聴けば聴くほど奥深い。休符がメロディの幹となっているAメロ、勢いよく突っ込んで行ったと思ったら、入り組んだ音階の迷路をさぐりさぐり進むようなサビ。この曲が蜘蛛の糸でなくてなんだろう。ピアノの伴奏も素晴らしい。

6、Starting Over
ミスチル史上最高の一曲であり、私が今まで聴いてきたあらゆる音楽の中でも最高の一曲と言って良い。玉置浩二の「Mr.Lonely」浜田省吾の「家路」山下達郎の「蒼氓」CHAGE&ASKAの「Pride」に匹敵する素晴らしい出会いでした。最初のフレーズでガツンと頭をぶん殴られる。そこからは自分も桜井さんの脳内ワールドに連れ去られ、自分が抱えている寂しさや我慢やモヤモヤを一緒に洗い流してくれる。最初にこの歌を聴いたとき、本当に毎日どうしたら良いのかわからないときで、自分でも苦しいのか、悲しいのか、わからなかった。でも、一番のサビを聴いたとき、夜中のリビングで嗚咽が出るほど大泣きしていた。もう30の男がである。泣き叫ぶようなサビと爆発するようなスネアが、自分の中にあった悩みを全てぶち壊してくれた気がしたのです。全てのフレーズが素晴らしいので、あえて何も挙げませんが、大サビの感情量が常軌を逸しています。Mr,Childrenの音楽って、雨の中を泣きながら全力疾走する少年の様な、そんな必死さと純粋さがあって、そんな永遠の少年性が人々の心を掴んで離さないんだと思います。まだこの世にこんな素晴らしいメロディとこんな世界を描ける言葉が残っていたのか、そんな感動すら覚えてまう最高の曲です。最初の10回は聴くたびに感極まってしまうので外では聴けませんでした。

7、忘れ得ぬ人
大人のラブソング。結ばれることのなかったかつての愛する人のことを歌っているようにも、先立ってしまった大切な家族のことを歌っているようにも聴こえる。かなりの高音から歌が始まるけれども、高音を維持したまま歌いのける桜井さんの技量には脱帽。初めて出逢った時の衝撃をそのままに、気持ちを高めながら持ち続ける比喩表現。最後の畳み掛けるようなサビ、でも一歩引いたような終わり方がまた、心を揺り動かして止まない。

8、Reflection
アルバムタイトルになっているのはインスト曲。桜井さんの弾くたどたどしいピアノが逆に繊細な印象を与えて効果的。

9、fantasy
桜井さんはよく「第一声の印象を重視している」と言うけれども、発声だけでなく、詞の選び方もかなりの力の入れようだと思います。弾むようなIntroも印象的だけれども、「隣の人に気付かれぬように僕らだけの言葉で話そう」というフレーズが素晴らし過ぎる。そしてサビの歌詞!「誰もが孤独じゃなく誰もが不幸じゃなく誰もが今より良く進化している」、最初にこのフレーズを聴いた往年のミスチルファンは「?」が浮かんだハズです、今更桜井さんが、そんな何のアクセントもないポジティブな詞を書くのか?と。そこはやはりこちらが間違っていました。さきほどの超ポジティブフレーズはカッコ付きなのです。そんな軽いポジティブな思考に対して一つ上の次元から見下ろし、それを「fantasy」と名付けるこのセンス。文句なしの最高傑作。

10、REM
ミスチル最も過激で攻撃的な曲ではないでしょうか。声も歌詞も演奏も強烈だけれども、メロディは非常に美しい。「いい人も悪い人もないっていう理論 テキストにて今日も展開中」という大サビが好きです。ダンディドンダンディドンダディドン!!

11、WALTZ
こういう攻撃的なマイナーロックを続けるところがいやらしい。真剣に聴けば、M.Childrenのアンダーワールドに引きずり込まれてしまう。でもそれがこのアルバムの聴き方です。思う存分沈みましょう。

12、進化論
ここから救済に入ります。希望の歌、進化論。シンプルなアコギと混ざり合う軽やかなピアノのハーモニー。気怠そうだけれども芯のすわった歌声と真摯に世界と向き合う歌詞。明る過ぎないけれども、希望にあふれる美しいこの世界。REM、WALTZからのこの振れ幅!地獄から天国へ。呪いから祝福へ。Mr.Childrenが他のバンドと圧倒的に違うところはここなんだろうなと思わされます。

13、幻聴
アンダーワールドにも潜り込んだし、その救済も終えた。もう最後で良いんじゃないかというところで、この曲を挟んでくるところが、凄まじい。桜井さんの底力。ギターのカッティングとタムのジャングルリズムパターン、希望へと邁進する様な間奏のシンセサイザー、上下に揺り動くAメロ、天空に突き刺さるような美しいサビ。まだこんなにカッコよくて、美しくて、感動的な曲を作れるか。この時点でもう「Refleciton」は史上最高傑作であると確信しました。

14、足音〜Be Strong
エース級の歌が何曲も連なる中でトリを務めるのが、シングルにもなった「足音」。そうだ、まだこの曲があったんだ。このアルバムの中に入っていても、完成度は全く見劣りすることがない。むしろシンプルなAメロBメロからの暴れまわるサビは将軍の風格さえ漂う。「疲れて歩けないなら 立ち止まってしがみ付いていれば 地球は回っていって きっと良い方向へ僕らを運んでくれる」このフレーズが大好きです。泣き叫ぶ様なメロディはやっぱりMr.Childrenの少年性を象徴している様な気がするのです。

もう本も読まなくても良い。勉強も必要ないし、旅行なんかいかなくてもいい。この「Reflection」さえあれば、強く優しく生きていけるような気がします。音楽の圧倒的な力を感じさせてくれる名作中の名作。史上最高のバンド、Mr.Childrenの最高傑作。もう次のアルバム出せないんじゃないかっていうくらい凄まじいアルバム。今年はこのアルバムに出会えただけで素晴らしい一年だっと言って良い。

 

REFLECTION{Drip}通常盤

REFLECTION{Drip}通常盤