「何もない」がある

音楽と本について書きます。日々考えたくだらないことも。

呪文/星野智幸

 

呪文

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最近話題になっている本です。ただこの小説を「現代社会の闇」とか「日本社会の縮図」とか言ってのけるのはあまりにも浅薄な発想だと思います。こんなこと実際には起きたことないし、これからも起きることはありません。web界隈もこんなに簡単に社会を動かせるほど力を持っていない、というか、人間はこんなに簡単に感化されません。

舞台は都会のおしゃれな街の隣にある落ち目の商店街。一念発起して軽飲食店を始めた部外者の主人公。部外者ながら商店街組合の主要人物になり次々に改革を断行していく図領という男。図領を崇拝する「未来系」という集団。

この小説の何が残念かって、話の流れが全て不自然で、全然現実味がないところです。

ありえないところ① 図領がイチャモンをつけた客に対する反論をwebで展開したところ大反響で商店街に人が溢れる

「切り込み隊長」みたいなブログ職人が図領の店を叩きまくる記事を発信し、それに対して図領がwebで反論し、社会現象のうねりがうまれるという話の展開なのですが、まずツッコミたい。誰がそんなしょうもない記事を読むんだよ。誰がそんな言葉に感動するんだよ。なんで一般人が「たとえお客さんでも迷惑なことをする人には断固として戦いましょう」という呼びかけに感化されるんだよ。確かにお客様は神様ですという意識が日本には根強くて、客商売をやっている人間はほとんど全員理不尽な目に合わされているでしょうよ。でもさ、だからってそんないつどこに現れるか分からない理不尽客の取り締まりパトロールなんてしようと思う?そこまで迷惑客って生活に根ざしてる?毎日現れるの??ボッタクリバーの取り締まりだって出来てないのに。自分勝手な客を取り締まってる場合?

ありえないところ② クズ道という薄っぺらさ
新興宗教クズ道が次々信奉者を増やしていくのですが、その思想が薄っぺらいこと。お前はクズだから死んだほうが良いんだよって、もう何それ。うるさいよ、ほんと。面と向かって自己否定され続けると本気で自信喪失して、あとは死ぬしかないって思うってか?そんな思想が人々に伝搬していく?それが人前で腹切する覚悟に繋がる?全く共感できない。クズと腹切のつながりが見えない。

ありえないところ③ オチがない
結局なんなの?ってくらい中途半端なところで終わります。商店街に何がおこるでもなく、主人公に何が起こるでもない。なんなんやこの話は。続きがあるのか?続きはこのアホ思想が日本を席巻する話か。んなわけあるかいな。

こんな世界を現代社会の闇だとか日本の縮図だとかのたまうのは止めたいただきたい。ただの”あり得ない”妄想です。